117第8回国立大学図書館協会マネジメント・セミナー

昨日の総会に続いて,「一歩先の大学図書館戦略を描く――知識イノベーションをめざして――」をテーマにしたセミナーがあった(神戸大学出光佐三記念六甲台講堂→「写真で見る神戸大学」→http://www.kobe-u.ac.jp/info/public-relations/photos/index.html)。
会場の神戸大学出光佐三記念六甲台講堂には中山正實(まさみ)の巨大な壁画三部作(「富士」,「光明」,「雄図」)がある。中央の「富士」のみが壁に直接描かれ,左右の壁画は麻布で描いたものを壁に固着させたものという。1938年に完成し,1977年に中山自身が一度修理し,没後30年目の2009年に修復された。セミナーそっちのけで見とれていた。
さて,基調講演は,大滝則忠(国立国会図書館長)「科学技術とイノベーションの基盤としての国立国会図書館の役割」で,3つの柱(国立国会図書館の概要,科学技術情報の拠点としての国立国会図書館東日本大震災アーカイブを中心とした国立国会図書館の取組)で以下の項目からなっていた。

  • 科学技術のイノベーションの基盤としての国立国会図書館の役割
  • 国立国会図書館の6つの基本機能
  • 国立国会図書館の歩み
  • この10年間の主な動き
  • 国立国会図書館の概況
  • 国の科学技術情報基盤としての歩み
  • 科学技術振興政策と国立国会図書館
  • 科学技術基本計画における研究情報基盤
  • 国立国会図書館が取り組むべき課題
  • 国立国会図書館の科学技術関係資料費の推移
  • 所蔵資料のデジタル化と電子情報資源の収集
  • 資料種別ごとのデジタル化実施状況
  • 時代別のデジタル化実施状況
  • 博士論文のデジタル化
  • デジタル化と著作権法との関係
  • 国等のインターネット資料の制度収集
  • オンライン資料の制度収集の対象
  • デジタル化のための環境整備
  • デジタル情報資源ラウンドテーブル
  • 国際的な連携
  • 電子情報資源の管理・保存
  • 電子情報資源の利活用の促進
  • NDLサーチ(開発・全体イメージ・連携機関)
  • 関連機関との連携
  • 大学の研究成果とNDLの連携
  • レファレンス関連情報の共有化
  • 東日本大震災アーカイブ(必要性・基本理念・全体イメージ)
  • 連携の結節点としての国立国会図書館
  • 大学における大震災関連情報(例)・大学図書館への期待
  • 「知識インフラ」(全体イメージ・構築にむけて)
  • おわりに

江夏由樹(一橋大学附属図書館長)「人文・社会科学分野における電子化の状況調査」と高橋隆行(福島大学附属図書館長)「理系研究者の大学図書館利用」のコメントをはさみ,科学技術基本改革とそれに対応する国立国会図書館の科学技術情報整備基本計画の推進策をめぐっての討論だった。
国立国会図書館の「知識イノベーション」のベクトルと大学図書館からのコメントにはズレがあるように思われた。さらに大学図書館からの発言はもっぱら大学教員からの図書館であり,学生の学びの空間としての図書館には触れられていなかった。
基調報告の大きさとは裏腹にコメントは各論すぎた。全国から集まる図書館関係セミナーとしてはやむをえないのかなと感じつつ,六甲台を後にした。