1037大田原高昭著『農協の大義』

書誌情報:農文協ブックレット10,98頁,本体価格800円,2014年8月10日発行

農協の大義(農文協ブックレット10)

農協の大義(農文協ブックレット10)

  • 作者:太田原高昭
  • 発売日: 2014/08/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

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政府の規制改革会議農業ワーキング・グループは「農業改革に関する意見」を発表した(2014年5月14日)。「農業政策上の大転換をするラストチャンス」として「非連続な農業改革」を打ち出した。農業委員会等の見直し,農業生産法人の見直し,農業協同組合の見直しを謳っていた。その後,規制改革会議「規制改革に関する第2次答申」,自民党農林水産戦略調査会・農林部会「農協・農業委員会等に関する改革の推進について」,農林水産省地域の活力創造本部「農林水産業・地域の活力創造プラン」にも取り入れられ,農業・農協「改革」の重要文献となった。
本書は題名からも分かるようにこの「意見」を逐一批判し,農協や農業委員会の役割と協同組合の歴史と日本的特徴,家族農業への評価と期待を論じている。農業と農協の見直しを一方的に主張する「意見」にはわが国の農業政策についての言及を欠く「異常な文書」(9ページ)であること,欧米の専門農協と日本型総合農協との違いとその評価,TPPへの参加と一体であることなどを説得的に展開している。
ガット・ウルグアイ・ラウンド以前の農政運動が政府・与党との駆け引きに終始していたのにたいし,そうしたことによる農協批判を承けて消費者・国民運動へ転換させてきたとする冷静な視点も持ち合わせている。
マスコミがしきりに煽る構図は政権(「改革派」)と農協(「守旧派」)との対立である。11日に投開票があった佐賀県知事選挙の結果につき,政権が推す候補が農協が推す元総務官僚に負けたことで「佐賀の乱」と報じた。農業・農協改革は必要である。どう改革するかは「意見」にある内容でなくてもいい。すでにJAの自己改革案も提示されている。
保守政権を長らく支えてきた農協が反TPPの先頭に立っている。その農協を潰すと公言する安倍政権。小規模家族農業と総合農協の意義をあらためて強調した本ブックレットは農業・農協改革の方向を明示している。