1082小島多恵子著『ふるさとをつくる――アマチュア文化最前線――』

書誌情報:筑摩書房,243+ix頁,本体価格1,900円,2014年9月20日発行

ふるさとをつくる:アマチュア文化最前線 (単行本)

ふるさとをつくる:アマチュア文化最前線 (単行本)

  • 作者:小島 多恵子
  • 発売日: 2014/09/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

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サントリー地域文化賞(→http://www.suntory.co.jp/sfnd/prize_cca/index.html)が創設されたのは1075年である。「全国的な視野で地域の文化活動を顕彰するものとしては,おそらく最も早くに創設された賞のひとつ」(10ページ)である。
同賞の受賞者は全都道府県にわたり194件までになった(2014年度現在)。創設時から長年選考委員長をつとめた梅棹忠夫の「一文の得にもならん阿呆らしいことを一生懸命やるのが,本当の文化だ」(12ページから孫引き)を地でいく9例(本文下に一覧)が紹介されている。著者はサントリー文化財団職員として事務局を担当しており,アマチュアたちが支える地域文化の力をみごとに引き出していた。日本の文化予算の貧弱さを批判するだけでなく,日本各地に根づく(根づかせた)文化活動の実際をみれば希望を見出せる。人口減少社会を悲観的に描く地域論にも一石を投じるものだ。
地域文化賞受賞活動のリーダーには教師,寺院関係者,自営業(なかでも造り酒屋と旅館の主)の方が多いという。「高学歴のUターン者が多く,比較的時間の融通が利き,地域の人々との接点が多い」(111-2ページ)からだ。自腹を切って支えるアマチュア文化活動と地域特性に無関係の地域文化を見ているのは日本各地の文化を実際に見聞きした著者の卓見だ。
巻末に本書で登場する地域文化活動のオフィシャルサイト一覧とサントリー地域文化賞歴代受賞者一覧がある。