日本新聞協会は本来の軽減税率導入と書籍・雑誌等とともに新聞(電子媒体を含む)への軽減税率の適用をもとめる声明を出した(17日)。
日本新聞協会はかねてより新聞への消費税軽減税率適用を訴えてきた(http://www.pressnet.or.jp/keigen/)。今回の声明は複数税率による軽減税率制度という与党の2013年度税制改正大綱に言う「税率10%への引き上げ時の軽減税率導入をめざす」という公約の実行を迫るものだ。
与党は9月10日,消費税の軽減税率制度について財務省が試案を示したのを受け検討を再開した。しかし,「日本型軽減税率制度」として示されたこの案は,消費者にさまざまな負担と混乱を強いるもので,税制としてきわめて問題が多い。与党はこれまで積み重ねてきた複数税率による軽減税率制度の議論に一刻も早く復帰し,同制度を2017年4月の税率引き上げと同時に導入すべきである。
財務省案は消費税率を10%に引き上げる際,全品目に10%の税率を課したうえで,飲食料品等の増税分の一部を限度額の範囲内で「ポイント制」により還付する仕組みである。飲食料品の消費税額を把握するためマイナンバーカードを活用するとしている。
この案の最大の問題は,事業者の事務負担軽減を優先して,その分を消費者にしわ寄せしていることである。子供や高齢者も含めてマイナンバーカードの携帯を求められることに加え,パソコンなどIT端末に習熟していなければ税の還付を受けられない。このため特に高齢者は利用しにくく,現在の高齢化社会にまったくそぐわない制度といわざるを得ない。
マイナンバーカードの取得は任意であり,しかも税率引き上げ時にカードの普及は間に合わない。買い物情報を読み取るカードリーダーもすべての飲食料品店や飲食店,宅配業者などに配置するには多くの費用がかかるうえ,そもそも困難である。この結果,税の還付を受けられる人が限られることになり,これは税の公平性や制度の簡便性の観点からも看過できない問題である。
消費者の買い物データを国が把握することに対する情報セキュリティー上の懸念やプライバシー保護の面での心配も残る。
さらに事後還付方式だと消費時点の痛税感の緩和に限界があり,結果として消費を冷やすことになりかねない。
これら構造的な問題を抱えている以上,今回の財務省案あるいはこれに類する事後還付方式の消費税軽減措置を導入すれば国民生活に混乱を招くことは必至である。
与党は2013年度税制改正大綱で「税率10%への引き上げ時の軽減税率導入をめざす」と打ち出してから,2年以上にわたって複数税率による軽減税率制度の導入を検討してきた。2017年4月の増税時には,今回の財務省案のように,消費者の負担軽減という軽減税率の趣旨が損なわれる措置ではなく,本来の軽減税率制度を導入することを求める。あわせて,わが国の民主主義と文化の基盤となっている新聞(電子媒体を含む)については,知識への課税は最小限度にとどめるという社会政策上の観点から書籍,雑誌等とともに軽減税率を適用すべきである。
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