1127黒川みどり・藤野豊著『差別の日本近現代史――包摂と排除のはざまで――』

書誌情報:岩波現代全書(58),xiv+280頁,本体価格2,400円,2015年3月18日発行

差別の日本近現代史――包摂と排除のはざまで (岩波現代全書)

差別の日本近現代史――包摂と排除のはざまで (岩波現代全書)

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現代日本には,被差別部落,女性,ハンセン病患者・回復者,障害者,アイヌ民族,在日韓国・朝鮮人外国人労働者,沖縄,LGBTなど多くの差別が存在している。古い観念や価値観によって作られ増幅されるから差別が現存するのではなく,ときに都合よく包摂し排除する社会の枠組みがあるからだ。この観点から日本近現代史を通覧したのが本書である。
公的資料や法的係争などを参照し,論者の所説に立ち入って,国民国家の成立から戦争体制を経て現代にいたる「他者感覚の欠如」を鋭利に切り取っていた。
「教条的な」マルクス主義歴史観から解放されたはずの日本近現代史研究に差別史観(=人絹史観)の重要性を喚起する一書にちがいない。