1137伊藤条太著『卓球天国の扉』

書誌情報:卓球天国,302頁,本体価格1,300円,2015年6月15日発行

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愛ちゃんの掛け声「サー」の語源,ヨーロッパの卓球で初めて練習前の準備体操を取り入れた国,卓球用具と実力との関係,「卓球は百メートル走をしながらブリッジをするような競技」と書いた人,東京にある卓球バー「和ん」のある場所,これらを知りたければ本書を手にとるべし。
本邦唯一の「卓球コラムニスト」の放つ第二段は「地獄」から「天国」へ誘っていた。「卓球メジャー化大作戦」,「卓球・妄想・卓球」,「卓球の常識を疑え!」,「追憶の卓球」の項目下のコラムだけでなく,250冊を超える卓球本コレクションからの紹介もあり,前著に比べれば洗練振りが際立っている。
「月刊 卓球公論」(卓球公論社,1933年12月号)――こんな卓球本があった!――の紹介のなかに,1933年6月25日に日本で最初の硬式卓球大会――日本では軟式卓球が普及していた――が開催されたと記録されているそうだ。日本卓球史には出てこないというから貴重な記録だ。「これに参加したものは大阪商科大学,和歌山高等商業,日本大学専門部,大阪薬学専門,大阪高等医学専門(松山高商は棄権)の諸校だった」(164ページから孫引き)。棄権したものの松山高商(現在の松山大学の前身校)にも硬式卓球クラブ(チーム)があったことを示している。また,個人戦優勝者の感想を紹介し,「イングリッシュ,グリップとゴム張りバット」のおかげで栄冠を勝ち取ったとのことだ。「イングリッシュ,グリップ」は恐らく現在のシェークハンドグリップのこと。「ゴム張りパット」(現在のラバー貼りラケット)とは多くの選手が「コルク張りバット」だったことを示している。
卓球本は圧倒的に技術書が多い。「卓球コラムニスト」の卓球コラム本は卓球本への挑戦でもある。「卓球そのものに関する情熱と考察」(292ページ)は並々ならぬものがある。