書誌情報:大月書店,242頁,本体価格1,600円,2016年1月20日発行

- 作者:松尾 匡
- 発売日: 2016/01/20
- メディア: 単行本
- -
金融緩和と政府支出の組合せ,つまり日銀の緩和マネーを利用して政府が福祉・医療に使い雇用拡大をはかれという主張であり,かねてから著者が力説してきたものである。本書の最大の特徴はいまこれを実現しないと安倍政権の野望である改憲(復古教育,国防軍,天皇元首化を許してしまうという著者の危機感だ。
アベノミクスの「三本の矢」・「新三本の矢」はおそらく機能しないだろうという見通しのもと,金融緩和と政府支出の組合せが明確な対案になりえ,悪政インフレ,長期金利高騰,国債暴落も起こらないことを説明し,復権したケインズ理論にもとづき現在の欧米左派の標準的な主張になっていることを紹介している。
アベノミクスの消費税増税,法人税減税,規制緩和ではなく,インフレ目標を掲げるのであればそれに対応して最低賃金や年金や社会保障給付も上げる。中央銀行が積極的に財政ファイナンスを進めることは中央銀行のこれまでの制約を取り払うことを意味し,中央銀行の改革につながる論点を含んでいる。政府支出を格差縮小や教育に使う財源を緩和マネーにもとめる著者の見立てはまったく正しい。
小選挙区制を廃止して比例代表制を基本とする選挙法改正で一致して選挙共闘をせよも評者には説得的だ。
- 関連エントリー
- 松尾匡著『ケインズの逆襲,ハイエクの慧眼――巨人たちは経済政策の混迷を解く鍵をすでに知っていた――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20150208/1423405450
- 松尾匡著『新しい左翼入門――相克の運動史は超えられるか――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20121112/1352723673
- 松尾匡著『図解雑学 マルクス経済学』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20110110/1294671690
- 松尾匡著『対話でわかる痛快明解経済学史』,『不況は人災です!――みんなで元気になる経済学・入門――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20100718/1279461324
- 松尾匡著『商人道ノスヽメ』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20090929/1254232506
- ふたたび,だがちょっとだけ松尾匡著『「はだかの王様」の経済学――現代人のためのマルクス再入門――』について→https://akamac.hatenablog.com/entry/20080805/1217951341
- 松尾匡著『「はだかの王様」の経済学――現代人のためのマルクス再入門――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20080803/1217769650
- 1年前のエントリー
- 上原久枝・藤井基男・織部幸治編『荻村さんの夢』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20150219/1424355397
- 2年前のエントリー
- 高本茂著『忘れられた革命――1917年――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20140219/1392814565
- 3年前のエントリー
- 日本リメディアル教育学会監修『大学における学習支援への挑戦――リメディアル教育の現状と課題――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20130219/1361282866
- 4年前のエントリー
- 韓国・慶尚大学校社会科学院編『MARXISM 21』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20120219/1329656370
- 5年前のエントリー
- 小林昇著作目録ブログ版(1966)→https://akamac.hatenablog.com/entry/20110219/1298098465
- 6年前のエントリー
- 7年前のエントリー
- 8年前のエントリー
- おさぼり
- 9年前のエントリー
- インターネットの経済学史関係E-textの現在と経済学史研究→https://akamac.hatenablog.com/entry/20070219/1171867994