1518松尾匡著『左翼の逆襲——社会破壊に屈しないための経済学——』

書誌情報:講談社現代新書(2597),281頁,本体価格1,000円,2020年11月20日発行

1970年代の「レフト1.0」(穏健派:旧社会民主主義や急進派:マルクスレーニン主義),1990年代の「レフト2.0」(穏健派:ブレア=クリントン路線,日本の旧民主党政権や急進派:エコロジー共同体主義あるいはディープ・エコロジー)に代わる「レフト3.0」(現代欧米にみられる左派ポピュリズム)を提唱し,「人は生きているだけで価値がある」を旨とする社会を構想している。

「レフト1.0」は,①国家主導型で大きな政府の志向,②生産力主義,③労働者階級主義,④社会主義を標榜する大国に甘い,を特徴としていた。「レフト2.0」は,①市場原理やNPO・コミュニティを利用した小さな政府,②反生産力主義・エコロジー,③脱労働組合依存・多様性の強制,④発展途上国の自立性尊重,を特徴としていた。「レフト2.0」は「レフト1.0」への反省を踏まえてそれとは違う道を志向したが,新自由主義の猛威と中間層の没落によって有効性を失った。

著者の構想は,「2.0の積極面を総合した1.0の復活」(149ページ)である。生きづらい毎日を送っている人たちの立場に立ち,地域におけるプラットフォームの構築であり,反緊縮の経済政策こそが「資本主義的経済システムを乗り越えて,社会主義的な社会システムに変革していく道」(235ページ)となる。財政均衡主義に与しないだけでなく,反緊縮の経済政策のその先を見通していた。

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