1170益川敏英著『科学者は戦争で何をしたか』

書誌情報:集英社新書(0799C),183頁,本体価格700円,2015年8月17日発行

科学者は戦争で何をしたか (集英社新書)

科学者は戦争で何をしたか (集英社新書)

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著者は恩師坂田昌一の言葉「科学者は科学者として学問を愛するより以前に,まず人間として人類を愛さなければならない」を研究室の壁に掲げているという。愛国心に燃えたドイツの科学者フリッツ・ハーバーノーベル賞受賞者であり,民生にも軍事にも使える「デュアルユース」が現実の問題になっている今こそ坂田の言葉を生かさなければいけないと切に思う。
エッセイ風に綴った日常語から平和問題と社会問題に目を向けろと科学者への叱咤激励と読んだ。憲法九条と原発――ただし原発の安全性確保にお金をかけろという立場――に政治と科学者の焦点を絞り,「選択と集中」の問題点を抉る提起は的を外していない。
科学は中性でありそれを善に使用することも悪に使用することもできる。科学と政治との切っても切れない関係を考えさせる新書になっていた。