書誌情報:日本経済新聞出版社,x+490頁,本体価格2,800円,2015年4月24日発行
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インタビューに大幅な加筆修正した岩井の思想史である。新古典派経済学への相対的な見方や現代経済学者群像のエピソードとしてもおもしろく読んだ。
宇沢弘文の問題意識を方法論的に継承し,「「見えざる手」の思想の数学的な表現」(118ページ)である新古典派からケインズ経済学への研究対象移行,ヴィクセルの不均衡累積過程理論とケインズの有効需要論から効率性と安定性の二律背反を理論化した不均衡動学,シュンペーターの経済動学と古典派経済学およびマルクスの資本主義論を摂取し「差異が利潤を生み出す」(189ページ)資本主義理論,貨幣の歴史的起源論を否定し「貨幣の自己循環法理論」による貨幣論,法人実在説を現実化し従業員組織の自立性を重視する会社制度を作り上げた日本資本主義論,「法と経済」理論とエージェンシー理論への懐疑を含む会社統治と信認論から「会社の二階建て構造論」(382ページ)による信認関係論とほぼ岩井の知的営為を詳しく語っている。
マルクス価値形態論の破綻論を内容とする岩井の貨幣論については宇野理論はじめマルクス経済学者との応答はまったくなかったようで,「マルクスに従いながら,マルクスを超えて,マルクスを読み直す作業」(229ページ)とし,想源は少年時代に読んだガモフの『1,2,3・・・無限大』の「無限世界の論理に従う存在」(12ページ)を挙げていた。
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