1215ジョナサン・スパーバー著(小原淳訳)『マルクス――ある19世紀人の生涯――』

(上)書誌情報:白水社,370頁,本体価格2,800円,2015年7月10日

(下)書誌情報:白水社,348+29頁,本体価格2,800円,2015年7月10日

  • -

マルクスの理論,私的生活,政治活動を19世紀の文脈に位置づけ,「私的生活と公的活動,そして知的表現を相互に連関させる」(「序論」13ページ)野心的なマルクス評伝である。マルクスの著作物にたいしては「独自に新たな訳文」(同上12ページ)を施し,新MEGAをふんだんに活用し,マルクスの最新化と純粋性を拒否しようとした歴史家の作品でもある。
マルクスの人格と思想の形成やヘーゲル思想の継承と批判,家庭や政治活動における葛藤と対立などをほぼ時系列に論じ,ヘーゲル思想の影響下にあったマルクス実証主義に徹したエンゲルスとを峻別していた。「実証史家」の著作にしては原文にある少なくない誤記には訳注が施されていた。