961パノプティコンと旧奈良監獄・旧奈良少年刑務所

1908(明治41)年に建てられ今年3月末に閉鎖された奈良少年刑務所の見学会がニュースになっている(→http://www.asahi.com/articles/ASK7J4WMFK7JPQIP01K.html,写真特集→http://www.asahi.com/special/gallery/prison_hotel/?iref=pc_extlink)。2020年には改装して「監獄ホテル」になる。司法省に勤めていた建築家の山下啓次郎(ジャズピアニスト山下洋輔の祖父)が設計した5大監獄(千葉,金沢,奈良,長崎,鹿児島)のうちのひとつで,現存の刑務所として最後まで使われた。国の重要文化財にも指定されている。
5つの収容棟(「第一寮」から「第五寮」)が見渡せる中央監視所が特徴の建築物であり,ベンサムが構想したパノプティコンそのものである。写真の解説では中央監視所からすべての「舎房」,受刑者の動きを見ることができるとある。
日本政府は奈良監獄を監獄近代化・西洋化の歩みの到達点とし,1910(明治43年)にロンドンで開かれた日英博覧会に模型を出展したという。また,山下は1901(明治34)年に欧米の監獄を視察したことがある。設計者の山下の設計思想と監獄近代化・西洋化の構想,さらにはパノプティコンとの関わりは調べる必要がある。