918重田園江著『社会契約論――ホッブズ,ヒューム,ルソー,ロールズ――』

書誌情報:ちくま新書(1039),299頁,本体価格900円,2013年11月10日発行

  • -

「政治秩序と共同体を創造するはじまりの瞬間における約束」(22ページ)をホッブズとヒュームに,「人間が約束する力,一般性を志向する力への信頼の思想」(23ページ)をルソーとロールズにもとめ,著者の言葉で語りきった社会契約論だ。その意味で「世の中には資料に埋もれることを免罪符にする,生硬で読者不在の研究書」(290ページ:文献案内から)とは違う。
自然状態から秩序が生まれる説明についての「ホッブズ問題」,ホッブズとヒュームの異同,ルソーの「6」の字歴史論,ヒュームの道徳論とロールズなど各論者の中心論点を掘り下げ,社会契約論を「人と他者との間の埋めようのない隔たりを前にして,それでも何かしたいと願うとき,つねにそこに立ち返る一般的な視点を示してくれる思想」(279ページ)とまとめている。
「次から次へとあきれるほどくだらないテーマの新書がどぎついコピーで売りさばかれる現状」(6ページ)に本書のようなベタで「地味な本」(同上)がかえって新鮮だった。