1641加賀美雅弘著『国境で読み解くヨーロッパ——境界の地理紀行——』

書誌情報:朝倉書店,iv+168頁,本体価格3,000円,2022年5月1日発行

ドイツ,フランス,チェコ,イタリア,スロヴァキア,ハンガリークロアチアセルビアボスニア・ヘルツェゴヴィナなどが対象の国境訪問紀行は,あたかもロシアのウクライナ侵攻を予言するかのようなタイミングで出版された。実際に訪れて国境の歴史や人々の暮らしについての考察は予想もしない広がりを持っていた。
ドイツとフランス国境,今はなくなった東西ドイツの国境(跡),ドイツ・チェコ国境,北イタリアの国境と言語境界,国境に接する多文化都市ブラティスラヴァー,線路で国境を越えたアウシュヴィッツ,バルカン諸国の国境事情,ヨーロッパの川と国境,のテーマから地理と歴史・文化・言語の多面的関係を探る。
モーツァルトを描いた『アマデウス』は18世紀末のウィーンが舞台だが,撮影はウィーンではなくプラハだった。プラハには建物を昔のまま放置した社会主義のおかげで街並みが残っていたからである。そんなエピソードを交え,国境が時には人々の架け橋となり,時には障壁と化してきたヨーロッパの中部・東部の歴史模様を読み解いていた。