1368『資本論』の刊行年をいつにするのか?

講義資料の更新のために高校での経済学とその歴史についての記述を確認してみた。『最新世界史図説 タペストリー(二十訂版)』(関連エントリー参照)は「特集 近代思想の成立」で「経済学の誕生〜絶対王政を支える経済学説と「自由放任」」で重商主義(コルベール)と重農主義(ケネー)を対比し古典派経済学(スミス)・自由放任を解説し,「17世紀から18世紀末までの経済学の流れ」を年表風に整理している(177ページ)。

さらに,「特集 19・20世紀前半の世界経済と経済学」では1ページを使って,世界の工場・イギリス(リカード)と後発国・ドイツ(リスト)を対比し,政府による経済への介入(ケインズ)と個人主義と自由な経済(ハイエク)を対比し,ケインズの主張とその影響,「小さな政府」と「大きな政府」の解説,さらには18世紀から20世紀前半までの経済学の流れを再構成し,かなり詳しい。「今日とのつながり」ではアベノミクスを「ケインズ主義に立脚したデフレ脱却経済政策」と記述している(以上251ページ)。

『山川 詳説世界史図説(第4版)』(関連エントリー参照)では「17〜18世紀ヨーロッパの文化と社会①」の「啓蒙思想」の項下で「経済学の系譜」を重商主義重農主義,古典派経済学,マルクス経済学,近代経済学を図にまとめている(157ページ)。

こと経済学とその歴史の説明については帝国書院版図説が懇切丁寧な説明になっている。スミスの著書については帝国書院版が『諸国民の富(国富論)』(251ページ)としているのにたいし,山川版は『諸国民の富』(157ページ)とだけしていた。

マルクスの『資本論』については帝国書院版が「1867」(251ページ),山川版が「1894」(157ページ)と違いがある。周知のように1867年は第1巻(第1部)刊行年で,マルクスの死後遺稿をエンゲルスが編集して1885年第2巻(第2部),1894年第3巻(第3部)を出版した。帝国書院版も山川版も正確を期すには工夫が必要だろう。

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