書誌情報:文藝春秋,278頁,本体価格1,500円,2016年8月25日発行
著者は調査報道NNNドキュメント「南京事件 兵士たちの遺言」(日本テレビ,2015年10月4日放送)に関わった。1937年12月,揚子江の岸辺でたしかに虐殺だけでなく,強姦,放火,略奪などが。
小野賢二・藤原彰・本多勝一編『南京大虐殺を記録した皇軍兵士たちーー第十三師団山田支隊の陣中日記ーー』(大月書店,19096年3月14日発行,[isbn:9784272520428])を紐解くと,12月16日の惨状が明らかだ。「二,三日前捕虜せし支那兵の一部5000名を揚子江の沿岸に連れ出し機関銃を以て射殺す,其の後銃剣にて思う存分に突刺す」・「午后三時大隊は最後の手段を決し,捕虜約三千を揚子江岸に引率し之を射殺す」・「捕虜総数一万七千二十五名,夕刻より軍命令により捕虜の三分の一を江岸に引きし I に於て射殺す」・「遂に二万の内三分ノ一,七千人を今日揚子江畔にて銃殺と決し護衛に行く,そして全部処分を終る,生き残りを銃剣にて刺殺する」・「捕虜三大隊で三千名揚子江岸にて銃殺す」・「夕方より捕虜の一部を揚子江岸に引出銃殺に附す」・「午後四時山田部隊にて敵兵七千人を銃殺す,揚子江岸壁も一時死人の山となる,実に惨たる様なりき」などと捕虜の虐殺に触れていた。17日には松井大将,朝香宮殿下の南京入場式があったことや18日,19日と膨大な死体処理の実際も詳しい。
調査報道記者の著者は,日記を書いた万年筆の普及状況や山田支隊が乗った徴用船白馬山丸の特定,南京「虐殺」現場の確認など裏付けをとり,虐殺「まぼろし」論の検討や日清戦争時の「旅順大屠殺」事件との共通性についても指摘している。
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