1789大塚信一・堀切和雅著『岩波書店の時代からーー近代思想の終着点でーー』

書誌情報:筑摩選書(0278),362+iv頁,本体価格2,000円,2024年4月15日発行

岩波書店の出版人として編集者として関わったふたりの対談集で,堀切が初題者として企画した「人類の思想史」である。扉の引用からもわかるようにユング岩波書店から多くの著作を出している河合雅雄宇沢弘文への言及が多い。とくに宇沢の社会的共通資本については度々触れ宇沢の大塚への影響を知ることができる。大塚著『宇沢弘文のメッセージ』(関連エントリー参照)にあった上田耕一郎不破哲三とのエピソードは具体的だ。「宇沢さんも一時期,短期間ですが党員で,日本共産党の上位メンバーである彼らにしばしば指導されたそうなのです。「君程度のマルクス主義理解ではまっとうな共産党員にはなれない」と怒られたって。国の行政でも共産党でも,幹部になる競争においてはその体系における能力主義に従うことになるというのは同じで,いわば裏返しの世界なのですね」(122ページ)。
時代認識や危機意識など出版人・編集者の気概を知ることができる一書である。