書誌情報:マルコ社,222頁,本体価格1,300円,2011年12月10日発行
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給与明細の本と確定申告についてのエントリー(下記関連エントリー参照)を目にされたのか,年末に送ってくださった。
評者の20代といえば大学院生・オーバードクター時代と重なっている。妻の扶養家族であり,奨学金と家庭教師や校正などのアルバイトでがつがつの生活でお金のことを考える余裕はまったくなかった。そもそもお金の常識を意識するのは定職につくあるいはつけるなど将来設計がある程度見通すことができなければならない。いま20代に必要なことはお金のことではなく,どんな生き方をしてもまともな生活ができるというメッセージかもしれない。
とはいえ,図と漫画で描くお金にまつわる「常識」は知っていていい(「50」となっているが「39」なのは?)。各項目4ページで読み切りなので1時間もあれば通読できるようになっている。給与とボーナス,貯金,賃貸と持ち家,クレジットカード,年金などすべて身近で必ず直面することばかりだ。現行の諸制度のなかで損しないためのマネーリテラシーといえる。今自分が所属している会社で学べるスキルをすべて吸収せよ,ボーナスを当てにするな,夫婦共働きせよ,など生き方・働き方へのお節介もすべてお金の損得からのアドバイスである。
累進課税制度の説明では現行にいたる累進性の緩和についての歴史が欲しい。結婚している夫婦には貞操義務が発生すると「言われています」との表現は(109ページ),貞操が法定された義務ではないことを言いたいのだろう(不貞行為は離婚原因になる)。離婚後の養育費支払いについては制度の説明だけでなく義務を果たしていない実態のほうが大問題である。地震保険金の支払いの説明図で「ご契約金額……」の「ご」は不要だろう。クレジットカードの利用の仕方や公的年金制度への言及は本書の立ち位置を示している。
20代の娘がタイトルを見て「貸して」と言ってきた。「常識」のない娘にはぜひ読んでもらおう。
- 関連エントリー
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