1038伊東光晴著『アベノミクス批判――四本の矢を折る――』

書誌情報:岩波書店,xvi+156頁,本体価格1,700円,2014年7月30日発行

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アベノミクスの三本の矢――異次元の金融政策,国土強靱化政策,成長政策――のいずれも誤っており景気浮揚に結びつかないと徹底批判し,くわえて政治体制の改変――第四の矢――にこそ安倍政権が目指す真の目的があるとし警鐘を鳴らしている。
第一の矢の批判は,株価の上昇と円安効果は異次元の金融政策によるものではない論証である。両者とも民主党政権下で外国人筋の動きと大がかりな為替介入によって同時進行していたことを指摘している。年金資金運用基金運用の見直しによる「官製相場」によることについても言及している。
第二の矢については,命の道と避難ビルの建設にこそとりあえず力を入れるべきで予算と膨大な海岸線という制限によって中途半端に終わると断じる。「第一の矢は飛ばず,第二の矢は折った」(52ページ)という。
第三の矢についても,実現性の高低を考えていない「時間軸なき政策」・「有効性を持たない音だけの鏑矢(かぶらや)」(67ページ)と厳しい。
さらに,原子力政策,労働市場政策,TPP政策と「隠された第四の矢」にもリベラルを自認する立場からの痛烈な言葉が並んでいる。
本書は衆議院選挙の前に出版されたものであり,時論性からいえば賞味期限かもしれない。それでも安倍政権の経済政策と政治姿勢への危機感は強いものがあり,米寿を迎える著者の気概を感じさせる一書である。