1118フェリックス・マーティン著(遠藤真美訳)『21世紀の貨幣論』

書誌情報:東洋経済新報社,429+57頁,本体価格2,600円,2014年10月9日発行

21世紀の貨幣論

21世紀の貨幣論

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マネーと銀行業の変革のために,マネー観の転換と改革案を提起していた。
マネーの本質は債権と債務を管理しやすくするための信用取引清算システムであり,3つの基本要素(信用,会計システム,譲渡性)からなる。商品貨幣論の延長にあるマネー論は一括されて否定されている。さらにこの本質を体系に組み込めない標準的経済学の限界も指摘される。「正統派経済学者は,既得権益の御用学者であり,彼らが客観的だと主張する経済理論は,マネー階級を擁護するための手前勝手な言い分でしかない」(216ページ)。「マネーのないマクロ経済学,マネーしかないファイナンス理論」(333ページ)というわけだ。金融危機に際して現代マクロ経済学も現代ファイナンス理論もなすすべがなかった理由になる。
銀行改革案は大胆だ。高インフレか債務再編による貨幣標準の変更であり,金融政策の政治的性格を踏まえ銀行の金融活動の規制であり,マネーと金融の範囲を最小限にすることがそれだ。
資本主義と金融システムの危機にマネー観の「革命」で対応しようという著者の熱意が全編から伝わってきた。