書誌情報:講談社ブルーバックス(B-1866),270頁,本体価格900円,2014年5月20日発行
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いわゆる暗号通貨のひとつビットコインを題材に数理暗号・情報技術と貨幣論・通貨制度との両面から本格的に論じている。現在のビットコインは投機目的で保有している人が目立つがゆえになにかしら胡散臭くみるむきもあるが,あのマウントゴックスの例はビットコインの暗号の強固さとは別の情報システムの問題だった。
通貨・貨幣を一般的な決済手段,価値尺度,価値保蔵にまとめ,金融を別立てにしていた。おそらくマルクス的な意味での支払手段機能を意味している。
「ビットコンが急成長をしても,不完全な通貨がお互いに補完する通貨制度という構造は,基本的には変わらない」(206ページ)としビットコインを含む複数通貨制度を展望するかぎりでは,暗号通貨も「良貨」になりうる。
通貨が異なる諸国(地域)間の最終的決済としてなにが選ばれているのか。「技術的にみても,経済社会システムのひとつとしても,十分に成立・安定・発展する可能性がある」(7ページ)と評者も思うが,「各国政府はいまだに金を外貨準備として保有してい」(190ページ)るところに核心がある。
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