1120木村元著『学校の戦後史』

書誌情報:岩波新書(1536),vii+197+12頁,本体価格780円,2015年3月20日発行

学校の戦後史 (岩波新書)

学校の戦後史 (岩波新書)

  • 作者:木村 元
  • 発売日: 2015/03/21
  • メディア: 新書

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今年は,1872年の学制から150年,戦後70年にあたる。現代日本の多数はこの戦後の学校に生徒・学生として学び,三世代あるいは四世代が同じ学校制度にいるというこれまでにない歴史を体現していることになる。
著者は近代学校制度を西洋から導入し「生きられる場」として形成された戦前期の「日本の学校」と戦後からの新学制との「二層」を確認し,高度経済成長およびその前後の学校を「新学制の出発」,「学校化社会の成立と展開」,「学校の基盤の動揺」として「制度の変遷とそこを生きた人びととの動向」(iiページ)を描いていた。
上級学校進学のための選抜機能と社会に埋め込める共同性構築との相克を当時の情報とエピソードを挿入して骨太に描いていた。「片廊下一文字型の校舎と運動場,屋内体操場からなる「日本の学校」の風景」(39ページ)は戦前期から,GHQ/SCAPが提示した英文教育基本法での教育対象は'the people'であったこと――日本文では「国民」とし国籍条項と絡めることになった――,集団就職を「労働力確保で不利な位置にあった中小企業・家族企業と地方出身の新規中卒者とを結びつける,1950年代半ばから60年代半ばに固有の歴史的形態」(101ページ)としていること,偏差値指標が入試の不条理から教え子を救いたいという東京都港区のある中学校教師によって考案されたことなどは興味深かった。
学校の意味があらためて問われているという著者の課題整理はいまだ確たる答えを見いだしていない評者にも理解できる。