1205山内太地・本間正人著『高大接続改革――変わる入試と教育システム――』

書誌情報:ちくま新書(1212),219頁,本体価格780円,2016年10月10日

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高校生の基礎学力を測る「高校テスト」が2019(平成31)年度から試験的に導入され,高等学校学習指導要領が適用される2023(平成35)年度から本格的に実施される。マークシートだけでなく記述式問題も導入し,「思考力・判断力・表現力」を測る新しい大学入試センター試験(「大学テスト」)は2020(平成32)年度から移行期間を経て2024(平成36)年度から本格的に実施される。「高校テスト」は現在の中学1年生から3年生(本格導入は現在の小学3年生から5年生),「大学テスト」は現在の中学2年生(本格導入は現在の小学校4年生)とそれぞれ高校1年生から3年生および高校3年生の時となる。
大学入試はこの学力テストである「大学テスト」だけでなく,多面的な評価で入学者選抜をおこなうよう検討が進められている。高校教育・大学入学者選抜・大学教育のシステム改革を高大接続改革と総称している。
山内はこの概要を紹介し,高大接続改革の意義を認めながら「大学名や偏差値で就職が決まるのは,正しい」(47ページ)ことや「大学を出るときの就職ではなく,どの高校に入ったか,つまり中学3年生の時までの学力,受験勉強で,おおよそ人生が決まる」(82ページ)事実をつきつける。
他方,本間はアクティブラーニングの総論を展開し,山内の高校と大学におけるその実践を多く紹介して大学教育の変化をみてとっている。
「社会の変化に適応し,学び方を変えていくべきなのは,親」(155ページ)・「(アクティブラーニングが)集団にアクティブを強制する矛盾」(158ページ)は納得できる。アクティブラーニングの可能性を論じることで「身も蓋もない学歴論」を払拭できたかどうかは不安が残る。