1736大竹文雄著『行動経済学の処方箋——働き方から日常生活の悩みまで——』

書誌情報:中公新書(2724),236頁,本体価格840円,2022年11月25日発行

計画してもそれが実行できない「三日坊主市場」に関連した著者のアンケート調査が紹介されていた。夏休みの宿題を最後のほうにしていた人たちは現在,肥満傾向,喫煙傾向,飲酒習慣,ギャンブル習慣がある可能性が高かったという。行動経済学でいう「現在バイアス」によって当初立てた計画を先延ばしにすることをいう。
行動経済学の登場によって経済学の政策対応や現実的処方箋の有効性が高まり,経済学の専門知がより世間の常識と噛み合うようになった。経済学と世間とのバイアスは,常識が直感的に理解しにくいこと,経済学の進歩によって経済学の常識が変わったこと,経済学の常識が世間の常識になっていないこと,健康,医療,教育の分野のように経済学の対象と思われていないこと,経済学は合理的な人間を対象にしているということ,から生じる。
本書は,日常生活,コロナ感染対策と経済活動,テレワークと生産性,市場経済とミスマッチ,人文・社会科学の分野を横断し,(行動)経済学の有効性を主張している。
「自分の行動についての悩みを解決したい,社会や組織の課題を解決したいという人は,行動経済学を学ぶべきだ」(エピローグ,229ページ)。そう,経済学は役に立つ!のだ。