読もうと思いながらまだ買っていない一書に大城孟著『解体新書の謎』(ライフ・サイエンス社,2010年5月,[isbn:9784898013410])がある。『解体新書』はドイツ人医師クルムスの医学書"Anatomische Tabellen"のオランダ語訳『ターヘル・アナトミア』を翻訳したものだ(1774年)。杉田玄白,前野良沢,中川淳庵らが小塚原刑場での腑分け(解剖)を見学し(実際に腑分けをしたのは「非人」),解剖と原著を照合しながら人体に関する多くの造語(臓器類,神経,動脈,軟骨など)を作ったことでも知られる。
大城の「「解体新書」の謎を解剖――医業の傍ら研究,前野良沢と杉田玄白の葛藤読み取る――」(日経新聞,2011年6月7日付)は,『解体新書』における「脉」と「脈」(どちらも「みゃく」)の混在を杉田玄白と前野良沢の葛藤にあったことを紹介していた。西洋医学の導入を急いだ玄白が俗字「脉」を,蘭語ができた良沢が正字「脈」を使い,違いをそのままに刊行したのが『解体新書』ではないかと。
「脉」と「脈」の頻度は3対7ほどで,「脈」のみ,あるいは「脉」のみの篇があり,「脉」が多い篇は当時の医者にとって難しかったであろう組織や胎児の解剖のところだという。
『解体新書の謎』をたまらなく読みたくなった。
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