880斎藤兆史著『教養の力――東大駒場で学ぶこと――』

書誌情報:集英社新書(0685B),183頁,本体価格700円,2013年4月22日発行

教養の力 東大駒場で学ぶこと (集英社新書)

教養の力 東大駒場で学ぶこと (集英社新書)

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日本の大学の教養部解体と教養再評価の波間に教養の力を再評価し,新時代の教養を提起している。
まず,学問や知識(学問/知識としての教養),それを吸収する過程と吸収(教え授ける/修得する行為としての教養),心の豊かさや理解力あるいは品格(身につくものとしての教養)という側面を,それぞれ戦前期の教養小説,英語教育・教養課程,英文学を例示して整理している。そこから引き出すのは,知的技術,バランス感覚(センス・オブ・プロポーション),善である。
さらに,情報選別感覚(情報帝京源の信頼性,主張の論理性,情報のたたずまい)の研ぎ澄ましと「さまざまな視点から状況を分析して自分なりの行動原理を導くバランス感覚」(122ページ)を教養の鍵とする。
それでも基本に置いているのは古典と言われるような本や本物を見る目の養成である。これを頭ごなしに強制しても身につくものではない。その必要を認識できるようになる。教養教育が意味を持つとしたらここに収斂すると読んだ。