書誌情報:卓球王国ブックス,303頁,本体価格1,300円,2003年11月29日発行
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卓球技術書ではない。卓球の出来事と著名選手を紹介しながら,優に120年(本書刊行時)を超える卓球の歴史を調べあげていた。
卓球(テーブルテニス)は1880年代にイングランドで生まれたとされている。国際卓球連盟もイングランドのどこかということで場所までは特定していない。上流階級のローンテニス愛好者たちが雨宿りの間に食堂の食卓でテニスを楽しんだのが始まりである。夕食後のレクリエーション,さらにはディナーに引き続いての楽しみだったから正装してプレーするのが礼儀だったという。
日本の卓球正史として卓球が日本に伝来したのは,東京高師教授・坪井玄道が留学先のロンドンから卓球用具セット(3組とも10組とも)とルールブックを持ち帰ったことによる(1902年)。このときのラケットは木製(樫の木)で,セルロイド球は6個入りだった。これをもとに試作したのが美満津商店(店主:伊東卓夫)で,ルールを含む卓球解説書『ピンポン』を出す。これが「記録にのこっている日本で最初の卓球書」(26ページ)という(同年)。また,翌年『中学世界』(博文館,1903(明治36)年2月10日)での卓球紹介記事が「わが国の雑誌等に紹介された一番古い卓球記事」(27ページ)である。ほかにも定期刊行物と新聞記事での卓球初出も特定していた(1921年と1918年)。
こうした卓球史から始まり,第1回世界選手権と第3回明治神宮大会(ともに1926年)以降の卓球史をさまざまなエピソードから綴っていた。中国があらゆるスポーツを通じて最初の世界チャンピオンは第25回世界選手権ドルトムント大会(1959年)の男子シングルス・容国団だった。容は文革の嵐のなかで迫害され68年自殺する(享年30歳,10年後名誉回復)。
著者はすでに鬼籍に入られたが(2009年4月24日),日本卓球協会『創立八十周年記念誌』の基礎資料を作成するなど卓球文化の継承と発展に大きな足跡を残した。
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