1099山下祐介著『地方消滅の罠――「増田レポート」と人口減少社会の正体――』

書誌情報:ちくま新書(1100),301頁,本体価格900円,2014年12月10日発行

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「増田レポート」(関連エントリー参照)はたしかにショック・ドクトリンといえるかもしれない。「人口減少」や「自治体消滅」を前提に「人口ダム」論や「選択と集中」論しか選択肢がないかのように主張しているからである。地方を票田とする政治家が本音は別として口が裂けても言えない「自治体消滅」を堂々と公言し農山漁村に暗い未来と諦観とを醸成させている。
限界集落」論を超えた地域再生を考え(『限界集落の真実――過疎の村は消えるか?――』ちくま新書[isbn:9784480066480]),周辺にリスクを負わせるシステムに問題提起した(『東北発の震災論――周辺から広域システムを考える――』ちくま新書[isbn:9784480067036])著者による「増田レポート」批判は,「共生」や「共働」や「複数地域所属」や「循環・持続」などのキーワードを駆使した対案を折り込んでいた。
折しも「ローカル・アベノミクスの実現に向けて」の副題をもつ「まち・ひと・しごと創生基本方針2015」が閣議決定された。「働く場づくり」・「新たな人の流れ」・「結婚・出産・子育て」・「地域連携」のテーマを実現するために新型交付金が財源として考えられている。東京圏に住む高齢者が元気なうちに介護体制が整った地方に移住する「日本版CCRC」構想についてはやはり日本創生会議がアドバルーンを上げたばかりだった。
「増田レポート」=地方消滅・人口減少ショックで気絶させ,「ローカル・アベノミクス」で再生させる。その道しかないわけではないことを本書から読み取ることができる。