1146松井良明著『球技の誕生――人はなぜスポーツをするのか――』

書誌情報:平凡社,335頁,本体価格2,800円,2015年5月20日発行

球技の誕生: 人はなぜスポーツをするのか

球技の誕生: 人はなぜスポーツをするのか

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手を使った球戯(ハンドボール),足を使った球戯(フットボール),ラケットやスティック,バットなど道具を使った球戯(打球戯)をかぎりなく遡りその系譜をヨーロッパ中心に追跡していた。打球戯,フットボールハンドボールの順に古く,今なお残っている球戯もある。
球戯から球技へと変化し近代的なスポーツとしての成立の前史を徹底して調べようという姿勢が貫かれていた。スポーツの組織化とは別のベクトルで民族スポーツとして独自の発展を遂げてきた多種多様な球戯の存在に驚かされた。テニスの前身といわれるジュ・ドゥ・ポーム(あの「球戯場の誓い」の球戯)も名を変えてヨーロッパ域に残っていた。
イギリス発祥のクリケット,ゴルフ,サッカー,ラグビー,テニス,ホッケーについては言及されているが,バドミントン(羽球だが球技)と卓球は関心外のようだ。もし近現代にアジアで作られた新しい球技という視点からは軟式テニスやラージボール卓球,今は廃れた軟式卓球,軟式野球,ゲートボールなどが思い浮かぶ。球戯から球技への進化だけでなく球技から球戯への再進化も進行中である。