書誌情報:小学館,295頁,本体価格1,600円,2016年8月1日発行
- 作者:眞一, 佐野
- 発売日: 2016/07/27
- メディア: 単行本
- -
『週刊朝日』連載記事「ハシシタ 奴の本性」問題の当事者による元全学連委員長・唐牛(かろうじ)健太郎の評伝とは二重の驚きだった。「ハシシタ」問題については「反省と私なりの思いは,別のところに発表した」(プロローグ,5ページ)とし「再起」(同上)の書が本書と書く。だが,別の「登用・剽窃問題」については一言もない。ノンフィクション作家としてはこちらのほうが死活問題である。「別のところに発表した」かどうかは評者は知らない。
それを措くとしてもたしかに唐牛健太郎の「その後」に注目したことはノンフィクション作家の嗅覚を感じた。田中清玄からの援助,ヨットスクール経営,居酒屋店主,漁師,暴力団山口組との関係,徳田虎雄の選挙参謀などを経験した唐牛の47年の軌跡は「その後」を漂流したかにみえる。唐牛とともに登場する60年安保闘争時代の「闘士」の述懐からはひとり唐牛の「漂流」ぶりが目立つ。「彼(唐牛:評者注)はその場その場で精一杯に生きた」(島成郎,192ページに再引用)のはたしかだろう。
唐牛を最後まで唐牛たらしめたのは1.16羽田闘争と4.26国会突入闘争時の全学連委員長という十字架だったように思う。
- 関連エントリー
- 溝口敦・荒井香織編著『ノンフィクションの「巨人」佐野眞一が殺したジャーナリズム――大手出版社が沈黙しつづける盗用・剽窃問題の真相――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20130524/1369406344
- 大井浩一著『六〇年安保――メディアにあらわれたイメージ闘争――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20110508/1304862131
- 佐野眞一著 『誰も書けなかった石原慎太郎』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20100829/1283092058
- 倉橋由美子著『聖少女』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20081108/1226135688
- 青木昌彦著『私の履歴書 人生越境ゲーム』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20080809/1218272681
- 佐野眞一著『だれが「本」を殺すのか』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20070311/1173541610
- 佐野眞一著『だれが「本」を殺すのか』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20070228/1172629980
- 1年前のエントリー
- 2年前のエントリー
- 3年前のエントリー
- 安田賢治著『笑うに笑えない大学の惨状』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20131108/1383920756
- 4年前のエントリー
- 5年前のエントリー
- 読売新聞教育取材班『大学の実力2012』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20111108/1320762162
- 6年前のエントリー
- 大学犬はなちゃんの日常(その201)→https://akamac.hatenablog.com/entry/20101108/1289226586
- 7年前のエントリー
- 辻村英之著『おいしいコーヒーの経済論――「キリマンジャロ」の苦い現実――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20091108/1257688651
- 8年前のエントリー
- 9年前のエントリー
- 水月昭道著『高学歴ワーキングプア――「フリーター生産工場」としての大学院――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20071108/1194511861