宮田富士男「差別と闘う 命がけの正義 全国水平社100年 支えた解放歌」(朝日新聞,2022年11月24日)で,「解放歌」の作詞者・柴田啓蔵(1901-1988)のことを知った。
「解放歌」は全国水平社創立の翌年1923年5月に福岡県出身の柴田が作詞した。いくつかの歌詞があるなかで,1926年の全国水平社大会から歌われるようになった。柴田は被差別部落の出身だった。「罵倒,嘲笑,嫌がらせ」を避けるために,旧制松山高等学校に進んだ(評者注:柴田の生年からすると1919年創立の旧制松山高等学校の最初期の入学生と思われる)。中退して水平社運動に身を投じたことや「解放歌」の一節を紹介していた。
「今や奴隷の鉄鎖断ち 自由のために戦はん 鬼神もおののく迫害や 天地も震う圧政に」「全人類の祝福を 飾る未来の建設に 殉義の星と輝かん」(メロディーは旧制第一高等学校寮歌「嗚呼玉杯に花うけて」)
「殉義」とは柴田の造語で,「正義のために命をかけて闘う」という意味である。柴田の歌詞の一節をタイトルにした,森山沾一・和智俊幸・横田司 ・坂田美穂共著『殉義の星と輝かん——百年生きる「解放歌」と柴田啓蔵——』(福岡県人権研究所,2022年5月,[isbn:9784910038513])がすでに刊行されている。
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