NHKスペシャル「クジラと生きる」(→http://www.nhk.or.jp/special/onair/110522.html)を観た。和歌山県太地町「いさな組合」と Sea Shepherd との,捕鯨と反捕鯨とのぶつかりを描いていた。一方で400年も続く伝統・食文化を強調し,他方で高等動物を殺すなという主張を対峙し,捕鯨を取り巻く環境の厳しさに焦点を当てていた。
大型種を対象とした生態調査目的の調査捕鯨,小型種を対象にした小型商業捕鯨,イルカ追い込み漁などの区別がないまま捕鯨か反捕鯨かにまとめてしまっている。捕鯨モラトリアムによって小型捕鯨漁とイルカ漁のみが存続しているが,イルカ追い込み漁は捕獲対象種,捕獲枠,漁期は管理されていることになっている。捕獲枠だけが管理されているような内容になっていた。イルカ絶命シーンをことさら強調する反捕鯨に足下をすくわれてしまった内容といえなくもない。
評者は調査捕鯨は調査に名前を借りた準商業捕鯨と考えている。調査捕鯨は即刻中止,そのうえでイルカ追い込み漁をふくむ小型商業捕鯨をどうするかが重要だ。
捕鯨と反捕鯨という大きなテーマに飲み込まれてしまった印象が強い。
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