601マイケル・ブルックス著(楡井浩一訳)『まだ科学で解けない13の謎』

書誌情報:草思社,350頁,本体価格1,800円,2010年5月1日発行

まだ科学で解けない13の謎

まだ科学で解けない13の謎

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変則事象13の物語である。変則事象とは「最先端の知識・知見をもってしても解明できない謎,咀嚼しきれない事物や現象」をいう。暗黒物質・暗黒エネルギー,パイオニア変則事象,物理定数の不定常温核融合,生命とは何か?,火星の生命探査実験,宇宙人信号,巨大ウイルス,死,有性生殖,自由意志,プラシーボ効果ホメオパシーと13のまだ解明しきれていない科学事象は物理学から医療まで広い。
科学が解き明かしてきたのはたとえば宇宙全体像の4%にすぎないことや異星の知的生命体からの無線交信の可能性・火星の生命体の存在,真核生物の発生と老化・死,現代科学医薬とプラシーボ・ホメオパシーなど「わからないことのわからなさ」の追求は量子物理学博士号をもつ科学ジャーナリストによるだけのことはある。
ひとつひとつのエピソードが一見無関係にみえる。けれども「すべての進歩は,わたしたち人間の暮らすこの宇宙についてだけでなく,わたくしたち自身についても多くを教えてくれる」「宇宙に探査機を打ち上げるくせに,自分の中にある原始的な衝動や欲望は解き明かせない」。
謎を手掛かりに科学の最前線での科学者の人間模様と熱気を伝える科学書はとても刺激的だった。全編に漲る進化する科学という著者の立脚点がいい。