書誌情報:IBCパブリッシング,255頁,本体価格2,000円,2022年6月5日発行
同名の紫紅社文庫([isbn:9784879405999])の改定新装本である。
日本における広告マッチの嚆矢は,福島安正シベリア単騎横断帰朝歓迎会(上野公園不忍池畔)の会場入口で株式仲買の玉塚商店が店名入りの広告マッチの配布に遡るという(1893[明治26]年)。その後,京都や名古屋の煙草業者が景品として銘柄入りの広告マッチをつけた。広告マッチの定着は中京マッチの藤井兄弟が広告マッチ専業の神戸燐寸社の設立した頃という(1922[大正11]年)。
評者が物心ついて以来広告マッチは見慣れた消耗品で手元に残っているのはひとつとしてない。日本各地には数え切れないほどの広告マッチがあっただろうと推測するが,「生々しい暮らしの歴史を撮し出す貴重な資料」(「まえがき」5ページ)である。
たばこ,交通・旅,変型広告マッチ,ホテル・旅館,百貨店,映画・演劇,菓子・喫茶,バー・キャバレー,洋酒・日本酒,雑誌・日本酒,雑誌・新聞・書籍,カメラ・時計・レコード,電気器具,燃料,化粧品・薬・フルーツバーラー,理容・美容,洋品,玩具・雑貨・文房具,催し物・キャンペーン,金融,娯楽,美人・抒情画・浮世絵,川柳,俳句・大津絵,趣味・愛燐家次作木版燐票抄,とマッチラベルの広告種別で一覧できる。
「3周年無産者新聞」や京都書籍雑誌商組合の「岩波文庫」の宣伝もあった。三越,資生堂,千疋屋,メンソレータム,ポマード,ノーシンも。マッチは買うものではなく,無料でもらえるものだったから広告マッチの広告媒体としての広がりを垣間見ることができる。喫煙者だった評者のポケットにはライターではなく行きつけの喫茶店のマッチが入っていた。
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