1100小田切徳美著『農山村は消滅しない』

書誌情報:岩波新書(1519),x+242頁,本体価格780円,2014年12月19日発行

農山村は消滅しない (岩波新書)

農山村は消滅しない (岩波新書)

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「増田レポート」(関連エントリー参照)での「市町村消滅」「地方消滅」論は「農村たたみ論」と「諦め論」を招来し,道州制などのような「制度リセット論」をあらためて呼び込んでいる。
農山村の「歩き屋」を自認する著者による現状レポートと小さな実践を積み重ねた「農山村再生論」は,農山村の強くて弱い両面をもった地域づくりのジグザグな道のりに光を当てる。「主体」「場」「条件」という柱をもとにした「内発性」「総合性・多様性」「革新性」の地域づくりの理念と方策,地域自治組織の構築,地域づくりの多様な支援体制,農山村移住の実態など農山村の可能性を見いだしている。
「農山村の帰趨は日本の未来に直結する」(241ページ)。本書では触れられていない漁村も含めて,農山村に現に生きて暮らしている地域の人々がいることから始まることを教えてくれる。「重心を低くして前進する農山村の人々の姿」(240ページ)を思い浮かべることができるかどうか。「消滅」と「再生」とを分ける分水嶺はここにあると思った。