1692山口広・川井康雄・阿部克臣・木村壮・中川亮・久保内浩嗣・佐高信著『統一教会との闘い——三五年,そしてこれから——』

書誌情報:旬報社,223頁,本体価格1,500円,2022年11月10日発行

統一教会による霊感商法による被害の多発を受けて,全国霊感商法対策弁護士連絡会全国弁連)は1987年2月に結成された。翌月の1987年3月には,国際勝共連合思想新聞』は結成に参加した全国弁連の4弁護士の顔写真・住所・電話番号入りの号外「暗躍する左翼弁護士」を配布した。「この四人に脅しをかけろ」(110ページ)というわけである。著者のひとり山口はそのひとりである。
本書は,統一教会の実情(阿部),歴史(山口),霊感商法(木村),政治との関係(中川),山口と佐高の対談,阿部元首相銃撃事件後に全国弁連が公表した統一教会と政府・地方自治体の首長に当てた声明(久保内)に,全国弁連が発表してきた声明や要請(計4種類),過去5年間の商品別被害集計,霊感商法窓口被害集計(1987年〜2021年),統一教会関連団体リスト,統一教会の責任を認めた判決の概要,信者に対する刑事事件事例の資料がついている。
統一教会の問題は,「国によって法人格を付与された宗教団体が,伝道の対象となる国民の信教の自由を侵害する違法な伝道・教化活動を長年にわたり継続的に遂行し,それによっておびただしい経済的・精神的被害を生じさせていることにあ」(150-1ページ)る。「被害の広範さやその年月の長さからすれば日本最大の消費者被害」(76ページ)であり,「統一教会ほど,善良なおばあちゃのじいちゃん,あるいは青年たち,あるいは奥様族を食い物にして,家庭を崩壊させたり人生を崩壊させたりする組織はありません」(125ページ)。
全国弁連が結成されてから35年(本書刊行時)経って,安倍元首相銃撃事件が起こってようやく政治家やマスコミが対応する体たらくを忘れてはならない。
統一教会問題は,「宗教や,宗教弾圧の問題ではない」(109ページ)のだ。