1752中村哲著『波瀾の時代を生きて——一歴史研究者の人生——』

書誌情報:日本経済評論社,xi+233頁,本体価格4,000円,2023年11月17日発行

「恩師以上の恩師」(関連エントリー中村哲先生喜寿記念『思い出文集』」参照)である中村哲先生の自伝である。「90歳になった時に,自伝を書こうと思いついた」(「はじめに」viiページ)とのことだが,記憶だけでなく歴史研究者らしくノートや資料にもとづいて書かれていることがよくわかる。
教育と研究を太い軸にしながら個人史を織り交ぜて描いた研究者人生は経済史研究者・中村哲を知る手掛かりになる。
評者がふたつの研究会で中村哲先生と接した時期は,竹本処分問題の余韻が残り,学部長職を終え,近代東アジア史研究に重心を移す時期と重なっていた。中村歴史理論の東アジア理解の具体化の道程にいたことになる。