266丸善ライブラリーニュース復刊第7・8合併号

2009年11月10日発行の最新号(通号159号)が届いた。
対談は出版不況と図書館,住民サービスと図書館機能をおもなテーマにしたもので,ライブラリアン(対談では図書館員)のあり方,養成への問題提起がおもしろい。
中元稿は早稲田大学図書館の答申の概要と最近の取組をまとめたもの。カレントアウェネス・ポータルとレファレンス協同データベース事業を紹介した国立国会図書館関西館図書館協力課は図書館業務の一端を知る手がかりとなる。でも「課」が書くわけない。誰かが書いたはずなので,執筆者を明記したほうがいいと思う。小西稿はNACSIS-CAT,CiNii,機関リポジトリを引き続き取り上げ,人文・社会科学分野におけるデータベース(本文付きデータベース)の整備・振興を提言している。これは国(国立国会図書館)の次期情報提供サービスの核心部分になるという評者の意見と重なっている。井上稿はイギリス・レスター大学での知見をもとに,図書館のラーニング・コモンズとしての位置づけと教育改善との接点を展望している。
岡本稿は「事業対象としての図書館」に挑戦してARGを株式会社にした貴重な経験を語る。「一人発起人,一人役員,一人社員」との謙遜とはべつに,意気に燃えた「小さくも偉大な一歩」だ。佐藤・横山稿は企業経営戦略から見直した企業資料室の一例を提供している。江上稿と藤江稿はアメリカのライブライアン事情と図書館に欠かせない家具のデザインについての読み物として気楽に読めた。「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」の佐藤稿は機関リポジトリアクセスログ分析から見える現在進行形の図書館情報学を語っている。

執筆者 タイトル
根本彰(東京大学)・常世田良(日本図書館協会)・豊田高広(聞き手・静岡市御幸町図書館) (対談)公共図書館を考える
中元誠(早稲田大学 「Waseda Next 125」と早稲田大学図書館の戦略的課題について
国立国会図書館関西館図書館協力課 「つながり」を生み育む図書館協力業務における情報の発信と共有
小西和信(武蔵野大学 人文・社会科学の学術情報流通(下)
井上真琴(大学コンソーシアム京都) FD活動の接点から図書館を視る――ラーニング・コモンズを例に――
岡本真(アカデミック・リソース・ガイド株式会社・ARG編集長)(ブログ→http://d.hatena.ne.jp/arg/ 事業対象としての図書館――ARG法人化を踏まえて――
佐藤和代(アサヒビール株式会社)・横山彰(新日本有限責任監査法人 企業資料室の新戦略
江上敏哲(国際日本文化研究センター ハーバード日記――誤算と誤解から――
佐藤翔(筑波大学)(ブログ→http://d.hatena.ne.jp/min2-fly/ 研究の話
藤江和子(藤江和子アトリエ) 拡散する読書空間――体感するしつらえ――
西口徹(河出書房新社 「宝探し」のおもいで
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