1173赤坂治績著『江戸の経済事件簿――地獄の沙汰も金次第――』

書誌情報:集英社新書(0800D),220頁,本体価格740円,2015年9月22日発行

  • -

江戸時代の歌舞伎,文楽,落語,浮世絵などから金銭がらみの事件や出来事を拾い上げ,経済と金の実相を描く。江戸時代の年貢制度や貨幣制度などは現代人のわれわれからはわかりにくい。それら制度の説明と金がらみの世俗との組み合わせが本書の特徴だ。
金貨・銀貨・銭貨による三貨制度,年貢の検見取法から定免法への変化,年貢率の五公五民から四公六民への変更,良質な上方製品,蕪村の「菜の花や月は東に日は西に」の背景になる菜の花栽培,大名貸しの実際,職業芸能・商業芸能の歌舞伎,歌舞伎興行と鰻丼誕生との結びつき,一茶の銭や金額を折り込んだ句の多さなど金融事情や商慣習も折り込んであった。
江戸時代の富籤をまねて現代の宝くじはつくられた」(209ページ)し,「現代の日本は賭博大国」(同上)とさりげなく書くも,江戸「文化」から見える現代はそれ以上に「金次第」の世の中に見えてきた。