1794原田マハ著『楽園のキャンパス』

書誌情報:新潮文庫(は-63-1),440頁,本体価格800円,2014年7月1日発行

「新しい美」を追求したピカソと「かつて税関に勤めていた日曜画家」ルソーとの人的繋がりだけではなくある絵のキャンパスの繋がりを,1906年から1910年のパリと主人公の大原美術館監視員の織絵が関係することになった1983年のバーゼルとを交錯させた美術ミステリーだ。
MoMaのキュレーターやインターポールのアートコーディネーターが登場し,ピカソとルソーをめぐるあるキャンパスに描かれた真贋の見極めはどう決着するのか。「アートを理解する,ということは,この世界を理解する,ということ。アートを愛する,ということは,この世界を愛する,ということ」(232ページ)と織絵に語らせ,キャンパスに凝縮された人間模様が秀逸だった。