編集責任・水田洋の同人誌の最新号(2012年7月15日)が届く。その存在は水田のいくつかの文章で知っていたが,初めて現物を手にした。年3回発行とのことで通算73号ということは,すでに創刊以来四半世紀経つ。
水田のエッセイは南京大学創立110年記念講演「思想の光」――「思想史の大河から,国民または国家が状況に応じて輸入変容し,それを個人が遠く大河を望みつつ吸収するという,三層構造の講義」(「編集のあとで」132ページ)――の改訂増補版である。南京大学では別の講義「アダム・スミスの自愛心問題」だった。浙江大学には水田の蔵書のうち和書6,000〜7,000冊が寄贈され,上掲スミスに関する講義をおこなったという。「(日中)双方の熱意のうち日本側では,かつて梁啓超が亡命中に日本語を習得して,日本語を通じて西洋思想を中国に伝えたという前例を考えていたし,中国側では,梁の先輩で同志であった厳復によるスミス導入への関心があった。厳復は浙江省の隣の福建省の出身である」(4ページ)。
スミスが取り持つ日中の縁は世紀を跨がってさらに続くことになった
執筆者 | タイトル |
---|---|
水田 洋 | 天皇制軍国主義下の日本における西ヨーロッパ近代思想(マルクス主義を含む)の研究 |
羅 衛東 | 後進国としての中国のヨーロッパ思想史研究が日本から何を学ぶか――水田洋先生講演会謝辞―― |
田口富久治 | 丸山先生から教えられたこと |
公文宏和 | 韋編三絶 |
加藤万里 | 現代詩は攪乱されたか――高見順賞同時贈呈式報告―― |
藤森節子 | 「八十歳『両地書』を読む」補遺――『シャンハイムーン』のこと―― |
金子史朗 | ある無神論者の放蕩4 |
水田 洋 | エリック・ホブズボーム『どのように社会を変えるのか マルクスとマルクス主義』第一章(前書きを含む)試訳 |
堀 昌義 | いつものように |
日方ヒロコ | やどり木 |
稲垣友美 | 円卓(終章) |
沢西 勉 | そろそろ自分の欲望への固着も諦め時かな |
加藤万里 | 彼はどこまで行ってしまったのか |
水田 洋 | 編集のあとで |
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