書誌情報:凱風社,293頁,本体価格2,800円,2013年6月10日発行
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たしかに小林多喜二著『蟹工船』は蟹工船の過酷な労働環境を描いた秀作であった。だが,それを含めた産業としての蟹工船を知ったつもりになってはいけない。蟹工船が始まった大正期,日本の輸出を支えた戦前期,外貨獲得に「貢献」した戦後期を経て漁業専管水域の拡大で終焉を迎える時期までの蟹工船興亡史は読みごたえがあった。
今治・波止浜の八木亀三郎が作った最初の蟹工船「樺太丸」(模型が北海道開拓記念館にある)や蟹御殿ではなく「塩とサケ」によると正確に調べ上げている。
『蟹工船』や映画「蟹工船」への批評は的確のように思える。『蟹工船』に相対し,蟹工船=地獄船から解放している。
長年にわたる資料収集と調査は,貨客船・笠戸丸の船歴調査が始まりだった。笠戸丸は,イギリスで進水し(1900年),ロシア義勇艦隊汽船,日露戦争で日本海軍船,ブラジルへの移民船(1908年),蟹工船になったという。
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