1116荻村伊知朗著今野昇編『笑いを忘れた日――伝説の卓球人・荻村伊知朗自伝――』

書誌情報:卓球王国ブックス,333頁,本体価格1,500円,2006年1月23日発行

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荻村の『卓球・勉強・卓球』(岩波ジュニア新書,1986年)をほぼ全文を第一部に,『スポーツが世界をつなぐ』(同左,1993年)から一部を第二部に,卓球誌とインタビュー・公園をそれぞれ第三部と第四部にまとめたもので,荻村13回忌に刊行された。
卓球選手として世界選手権各種目に12回の優勝をとげ,日本卓球協会の理事や専務理事,第3代国際卓球協会会長を歴任した。
20年以上も前の段階で卓球戦術を空間スペース・時間・回転で考えたり,レシーブミスを含んだレシーブ戦略など卓球理論としても秀逸である。ボールをオレンジイエローに変え(現在は白に復帰),テーブルをブルーにし,コートマットをワインレッドにしたのは国際卓球協会会長としての業績だ。ランキングシステム,賞金大会も荻村の手腕による。
国際卓球連盟(協会)の,国でなく協会が参加する方式や予選なしの世界選手権方式など他のスポーツ組織にはない組織的特徴の歴史も詳しい。南アの非人種主義協会やパレスチナの加盟,統一コリアチームの編成,中国・台湾の代表権問題など政治とのかかわりについても紙数を割いている。