1216八木紀一郎著『戦前における社会科学の成立――歴史意識と社会的実体――』

書誌情報:vi+277頁,非売品,2017年2月1日

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著者が1971年4月16日に提出した東京大学文学部社会学専修課程(指導教員:福武直)の「執筆時復元版 1970年度卒業論文」(「付録」に共有林野に関する農村調査レポート)である。
戦前の社会科学が「日本市民社会の〈自己批判〉とその〈変革〉の現実性を確認すること」を目的としながら「自己崩壊」せざるをえなかった理由を,認識哲学の危機論(三木清西田幾多郎,本多謙三,戸坂潤),歴史論(野呂栄太郎服部之総),維新論・日本資本主義論(羽仁五郎と山田盛太郎)から分析し,戦後社会科学の出発点を確認しようとしている。
「ロマーン」を語った羽仁と「総対抗と展望」を示し読者に「ロマーン」を語らせる山田との対比が鮮やかだ。古希を迎えた著者が若き日の習作を通して著者の「ロマーン」を語ったものと受けとめた。