書誌情報：中公新書（2594），xii+276頁，本体価格860円，2020年5月25日発行
- 作者:野口 雅弘
- 発売日: 2020/05/19
- メディア: 単行本
宗教社会学と政治理論，多くの関連する人たちに触れたのウェーバーの生涯と思想，ウェーバー理論の受容に力点を置いて，こちらのウェーバー本は，彼の「哲学的・政治的プロフィール」を描いている。
父母の物語の継承を「法学を学び，政治家になった父と信仰心に篤いユグノーの末裔の母の間の緊張関係は，後年のウェーバーの基本的な考えを深く規定した」（21ページ）と簡潔にまとめ，ポーランド移民にたいする姿勢を「移民排斥論の一ヴァリエーション」（49ページ）とした。プロテスタンティズムについては「人権宣言の宗教的な起源というイェリネクのテーゼを，経済と宗教の関係に転用した」（75ページ）とし，かの「ベルーフ」について「生計を立てる営みであると同時に，使命でもある」（79ページ）と二つの意味を確認し，「働き方」の現代的解釈に繋げようとしている。
ウェーバーは「マルクスをよく読んでおり，かつその理論を自分の枠組みに組み込んでいる」（121ページ），また，「官僚制の表の顔を理念的に記述し，カフカはそれを小説の形で裏から書いた」（133ページ）と，ウェーバーの理論の特徴を相対的に描いている。
ウェーバーのドイツや日本での受容もページを割いている。妻マリアンネの努力にもかかわらずドイツではしだいに忘れ去られていく事情や「鉄の檻」解釈を巡るナチ論，日本における「中産的生産者」論や近代化にかかわるニーチェ的ネガティブ評価なども詳しい。
ウェーバー研究第三世代のひとりは近代と格闘した思想家に正面から格闘していた。
-関連エントリー
--今野元著『マックス・ヴェーバー——主体的人間の悲喜劇——』→https://akamac.hatenablog.com/entry/2020/06/16/164121
--マックス・ウェーバー作（バラエティ･アートワークス漫画）『まんがで読破 職業としての学問・政治』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20130828/1377699883
--橋本努・矢野善郎編『日本マックス･ウェーバー論争――「プロ倫」読解の現在――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20090413/1239634050
--羽入辰郎著『学問とは何か――「マックス・ヴェーバーの犯罪」その後――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20081027/1225118295
--クリスタ・クリューガー著（徳永恂・加藤精司・八木橋貢訳）『マックス・ウェーバーと妻マリアンネ――結婚生活の光と影――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20080421/1208771554
--橋本努著『自由に生きるとはどういうことか――戦後日本社会論――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20071127/1196157395
--羽入辰郎著『マックス・ヴェーバーの哀しみ――一生を母親に貪り喰われた男――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20071123/1195804826
--石崎津義男著『大塚久雄 人と学問――付 大塚久雄「資本論講義」――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20070409/1176103348
-1年前のエントリー
--難読名字（その49）：御家瀬→https://akamac.hatenablog.com/entry/2019/06/29/221502
-2年前のエントリー
--「荘則棟インタビューVol.4」→https://akamac.hatenablog.com/entry/20180629/1530278366
-3年前のエントリー
--スポテイメント（新卓球リーグT2の挑戦）→https://akamac.hatenablog.com/entry/20170629/1498741817
-4年前のエントリー
--『季刊 読書のいずみ』第147号→https://akamac.hatenablog.com/entry/20160629/1467207917
-5年前のエントリー
--錦織圭のテニスから学べること→https://akamac.hatenablog.com/entry/20150629/1435585983
-6年前のエントリー
--アームレス卓球選手，イブラヒム・ハマト→https://akamac.hatenablog.com/entry/20140629/1404052886
-7年前のエントリー
--国際卓球連盟（ITTF）と日本卓球協会（JTTA）の広報戦略→https://akamac.hatenablog.com/entry/20130629/1372513952
-8年前のエントリー
--「野球狂の詩」愛媛大学版（その2）→https://akamac.hatenablog.com/entry/20120629/1340978503
-9年前のエントリー
--小林昇著作目録ブログ版（1985）→https://akamac.hatenablog.com/entry/20110629/1309353696
-10年前のエントリー
--堤未果著『アメリカから〈自由〉が消える』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20100629/1277819712
-11年前のエントリー
--永井義男著『江戸の性の不祥事』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20090629/1246281158
-12年前のエントリー
--おさぼり
-13年前のエントリー
--アダム・スミス略年譜→https://akamac.hatenablog.com/entry/20070629/1183087672
