458高井弘之著『検証『坂の上の雲』――その,あまりにも独善的・自国中心的なるもの――』

書誌情報:えひめ教科書裁判を支える会制作・発行,114頁,本体価格500円,2009年12月6日発行・2010年1月6日第2刷発行

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研究室を早めに後にして,まずは愛媛県美術展「濱田亨展」に行き,鑑賞後ある書店で探し物をする。ふと目にしたのが,司馬遼太郎と坂雲関連コーナーに積み上げてあったこの本だった。簡易製本にして市販にしたものだ(奥付の参照ウェブではブックレットと言っている→http://www.dokidoki.ne.jp/home2/zxvt29/sub4/4/sakakumo.html)。えひめ教科書裁判を支える会は,愛媛県で扶桑社版教科書を県立養護学校等(2001年と2005年)と県立中高一貫校(2002年と2005年)で,今治市で2009年度にそれぞれ採択したことにたいして,採択取消・損害賠償請求,無効確認請求,公金返還請求などをしてきた。
本エントリーでは,とくに坂雲関係については多くを書いてきたから,司馬史観や坂雲への批判的検証も大いに歓迎だ。このブックレットでは,近代日朝関係の歴史的事実をおさえ,それと対比させながら坂雲の問題点を指摘するという構成になっている。坂雲の明治日本美化とアジア蔑視との批判は中村政則本とも共通する正論だ。テレビドラマ坂雲は司馬史観を後景に退かせながら子規・好古・真之の青春物語に収斂させ,小説坂雲とは趣を変えている。
テレビドラマ坂雲が時代背景として史実を重視せざるをえないとすれば,このブックレットの発行は意味のあることだ。司馬漬けだけでは主食にならない。あまりの偏食はよくない。バランス良く中村屋の海苔やこのパンも食べるにこしたことはない。世界遺産醍醐寺の桜も見ておきたい。

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