書誌情報：交通新聞社新書（044），230頁，本体価格800円，2012年6月15日発行
命のビザ、遥かなる旅路 - 杉原千畝を陰で支えた日本人たち (交通新聞社新書044)
- 作者:北出 明
- 発売日: 2012/06/15
- メディア: 新書
杉原千畝が発行したビザを持つユダヤ人をウラジオストクから日本（敦賀），日本（横浜あるいは神戸）からアメリカに輸送したのはジャパン・ツーリスト・ビューロー（後の日本交通公社，現在のJTB）の斡旋による日本郵船の船だった。そして当時毎週一回，20数回にわたって日本海を往復し添乗斡旋にあたったのがジャパン・ツーリスト・ビューローの職員の大迫達雄だった。
著者の上司であった大迫が残した7葉のユダヤ人の顔写真の探索が本書だ。結果的には本書刊行の段階では7葉の人物を特定するまでにはいたらなかったが，ウラジオストクからの受入港だった敦賀とユダヤ人が一時住んだ1941年の神戸の点描のほか，アメリカに渡った何人かのユダヤ人（スギハラ・チルドレン）訪問や日本郵船船舶の追跡（あの氷川丸もそのうちの一隻）が詰まっている。
杉原が発行したビザは「21日間有効の，目的国に行くための日本通過ビザ」（129ページ）であったことや日本通過ビザを持っていなかったため敦賀からウラジオストクに送り返された難民が72名いたこと（キュラソー上陸証明書の発行で何度かの往復の後に天草丸で敦賀入港できた）も明らかにされている。
本書でも触れていた妹尾河童『少年Ｈ』（[isbn:9784062645904]・[isbn:9784062645911]）や野坂昭如『火垂るの墓』（[isbn:9784591093436]）での神戸のユダヤ人の描写を思い出した。
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