1775辻信一著『捕鯨史ーークジラをめぐる国際問題の理解のためにーー』

書誌情報:信山社,xlii+737頁,本体価格14,800円,2024年1月30日発行

捕鯨への批判が高まっているなか,水産庁はあらたに大型のナガスクジラ捕鯨対象にした(正式決定は今夏)。そんな折,新しい捕鯨母船「関鯨丸」(共同船舶)が竣工し,東北沖での初操業のため下関港を出港した(21日)。国際司法裁判所南極海での日本の調査捕鯨の中止を命じてから(2014年),IWCからの脱退(2019年)以降は沿岸での商業捕鯨を続けてきた。
本書は,捕鯨と鯨肉文化の歴史を遡り,捕鯨技術,組織,儀礼や日本各地の捕鯨から欧米の近代捕鯨商業捕鯨モラトリアム,捕鯨の将来までを扱い,さながら商業捕鯨を是とする立場からの捕鯨百科といっていい。
「非致死的調査(目視調査など)だけでは,資源管理に必要なデータを十分には得ることができない」(688ページ)とした調査捕鯨の必要性の強調や「将来的には捕鯨国から構成される新たなクジラ類の国際管理機関を設立することが望ましい」(689ページ)とし非捕鯨国のオブザーバー参加を構想していることに明らかだ。
とはいえ,なぜ人は各国は捕鯨をしてきたのかが理解できる一書であることはまちがいない。