1744都留康著『お酒はこれからどうなるか——新規参入者の挑戦から消費の多様化まで——』

書誌情報:平凡社新書(1009),230頁,本体価格900円,2022年8月10日発行

お酒の新しい動向に着目し,現地調査と専門の経済学的分析を方法論に,生産(日本酒,日本ワイン,梅酒,クラフトジン),消費(家飲み,居酒屋,醸造所・蒸留所併設の飲食店),ノンアルコール市場を取り上げている(ビールと焼酎については前著『お酒の経済学』で触れられている)。
日本酒には参入規制の全面的緩和を,日本ワインには欧州種と日本固有種との双方を国内の製品ポートフォリオにもつことを,梅酒には種分化による進化プロセスを,日本のジンにはクラフトジンの可能性をそれぞれ見出していた。
また,家飲みと外飲みとの併存に日本の特徴をみてとり,居酒屋を飲むことと食べることとが一体化した世界にもまれな飲食空間とし,醸造所・蒸溜所併設の飲食店に差別化の到達点を分析していた。
「お酒を飲む人も,飲めない・飲まない人も楽しめる,ノンアルコール飲料のさらなる開発」(213ページ)に,健康志向時代のお酒の可能性があった。