1700後藤茂文著『鉄道きっぷ探求読本』

書誌情報:河出書房新社,214頁,本体価格1,520円,2022年12月30日発行

全国のJR路線の99%を乗車してきた著者は,「きっぷ鉄」である。鉄道などを利用して旅するときの「きっぷ」収集家であり,「乗り鉄」や「撮り鉄」同様,「きっぷ鉄」という趣味のジャンルを極めようとしている。
「切符」は乗客以外の「モノ」を運ぶために使われるため,対象は乗車券や特急券などの「きっぷ」である。「きっぷ」の種類,鉄道の発展に位置づけた「きっぷ」の歴史,「きっぷ」収集の秘訣,チケットレス化で激変する「きっぷ」事情など,「きっぷ」にはさまざまな経済活動が刻まれている。
戦前の「乗車券蒐集家」山本不二男のコレクション(国内外の鉄道関係の資料,国内のきっぷや時刻表,パンフレットなど)は現在天理大学附属天理参考館に譲渡されているそうだ。
NHK記者として松山在住とのことで,四国や愛媛県の話題も多い。JR予土線の「近永駅」は「きっぷ鉄」のあいだでは聖地とのこと。この駅は簡易委託駅のため「きっぷ」をその場で発券できる端末がなく,常備券や補充券(いわゆる「軟券」)で乗車券・特急券などを販売する。それが唯一無二の「きっぷ」というわけだ。
無人化される駅や出札窓口の廃止が決まった駅,閉店が決まった旅行会社の店舗で「きっぷ」を買ったり撮影する「葬式鉄」も多いというが,まだ若い著者の「きっぷ」コレクションが歴史の証言になる可能性がある。